健康・福祉・子育て

一生モノの「歯」を大切にしていますか~歯周病・むし歯を予防しよう~

心と体は一人ずつに与えられた取り替えの効かない大切な持ち物だとよく言われますが、歯についても同じことが言えます。歯が痛くない、何でも噛めることは、当たり前のことのようですが、大切に扱わずメインテナンスを怠ると気づけば歯を失っていたという状態になりかねません。
2022年に行われた調査によると、約半数の人が歯の定期チェックをしておらず、また、口のトラブルを抱えた人の約8割が「もっと早く受診しておけばよかった」と後悔しているとのことです。

歯を失う2大原因「歯周病」と「むし歯」

歯周病

歯周病はなんと成人の約8割が抱えているといわれています。歯垢(プラーク)中の歯周病菌が増殖することで、歯肉に炎症が起こります。進行するにしたがって口臭や出血が現れ、炎症が歯肉に限定された「歯肉炎」から、炎症が進んで歯を支える骨が溶けてしまう「歯周炎」に進行し、歯を失う大きな原因となります。

むし歯

むし歯というと子どもが罹るものという印象が強いかもしれませんが、成人でも約3割が未処置のむし歯を有しているといわれています。むし歯は、歯に歯垢(プラーク)がたまって細菌が増殖し、砂糖などの甘味料を分解して酸を作ることによって歯の表面からカルシウムが溶け出す状態が続いて発生します。
歯を磨かずに甘いものやペットボトル飲料を摂り過ぎたり、セルフケアが不足したり、歯周病の進行により誘発されることもあります。
歯を失う2大原因である歯周病とむし歯は、いずれも初期に気づきにくく、じわじわ進行していくことから手遅れになることも少なくありません。

お口のトラブルによる影響の範囲は広い

お口の健康が損なわれることの影響は全身に及びます。

糖尿病

糖尿病によって免疫機能が低下し、感染しやすい状態となることで歯周組織の炎症が進み、歯周病が悪化すると言われています。また糖尿病患者に歯周病の治療を行うことで、血糖値の改善が見られることから、歯周病と糖尿病との間には双方向的な関連があるといわれています。

狭心症・心筋梗塞・脳梗塞

狭心症・心筋梗塞・脳梗塞とは、動脈硬化により血液を送る血管が狭くなり、ふさがってしまい、心臓や脳に血液供給ができなくなることで起こる重大な疾患です。不適切な生活習慣(食生活や運動不足、ストレスなど)が要因とされていましたが、最近では歯周病菌などの細菌感染も注目されています。歯周病菌などの刺激により動脈硬化を進め、血管の内腔が狭くなります。また、粥状の塊であるプラークが剥がれて血液に流れることによって狭くなっている部分や血管の細くなる部分で詰まって梗塞を起こします。

認知症

近年の様々な研究で歯周病は認知症の発症と関連が深いことがわかってきました。国立長寿医療研究センターの調査によると、慢性歯周炎のある人はない人に比べて、明らかに認知機能が低下していました。また、台湾における10年間の追跡研究によると、慢性歯周炎のある⼈はない⼈と⽐べてアルツハイマー病発症のリスクが1.7倍⾼くなったことが報告されています。

フレイル(虚弱)

高齢者では、多くの歯を失うことで噛む能力や飲み込む能力といった口腔機能が低下し、十分な栄養が摂れなくなると低栄養のリスクが高まります。低栄養によって筋肉量の減少(サルコペニア)や運動器症候群(ロコモティブシンドローム)につながり、要介護となるおそれが高まります。

歯周病・むし歯を予防するために

以上のことから、全身の健康を維持するためにも口と歯の健康はとても大切です。ここで歯周病・むし歯予防のポイントを4つ紹介します。

セルフケアとプロフェッショナルケア

毎食後の歯みがきをし、デンタルフロスや歯間ブラシも活用しましょう。どうしても時間がないときはマウスウォッシュを使うことで菌の増殖を防ぐことができます。しかし、セルフケアだけでは落としきれない汚れがあります。定期的に歯科医院を受診し、歯石や歯垢を落としてもらいましょう。また、歯科医師や歯科衛生士によるチェックで初期段階の歯周病やむし歯を発見してもらい、早期治療につなげることも大切です。

禁煙

タバコと歯周病の関係は深く、歯周病のリスクは1日10本以上喫煙すると5.4倍に、10年以上吸っていると4.3倍に上昇し、また重症化しやすくなるといわれています。
タバコは動脈硬化を進行させる要因でもあるため、歯と身体の両側から禁煙には大きな意義があります。

糖尿病の治療

健診等における血液検査で「血糖値が高い」と言われた方は要注意。医師に相談し、診断を受けたら速やかに治療を行いましょう。治療を始めたら自己判断で中断せず、治療を継続します。血糖値が安定している状態が続けば、歯と口の健康にも役立ちます。

規則正しく栄養バランスの良い食生活

栄養バランスの取れた食事で、免疫状態を良好に保つことは歯周病による炎症の悪化予防の観点から大切です。バランスのよい食事を心がけましょう。
また、歯周病菌は、食事の糖分を餌に増殖します。ダラダラ食べは、歯周病菌の繁殖につながりやすいので、間食は時間と量を決めましょう。
量が多くなりがちなペットボトル飲料やエナジードリンクなど糖分の多い飲み物にも注意しましょう。

成人歯科健診

対象:20歳から70歳までの5歳刻みの節目年齢で歯科定期検診を受けていない人
※対象者には通知が送付されています。紛失した人は健康推進課まで問い合わせてください。
期間:毎年8月〜11月末
実施機関:市内指定歯科医院
自己負担金:700円(70歳の人、住民税非課税世帯に属する人等は無料)
美しい歯と笑顔と健康長寿のために、5年に一度の機会を逃さず活用してください。

参考資料・引用:

1)「歯科医療に関する一般生活者意識調査」:2022 年8月26日(金)〜8月28日(日)全国の15歳〜79歳の男女1万人を対象(公益社団法人日本歯科医師会)
2)歯周病と認知症の関連について:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
3)特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会ホームページ
4)厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「eヘルスネット」

問い合わせ

健康推進課
TEL:0550-70-7765